霧と森と残骸(抄)1

そこにある光の束がまるで生き物のようにうごめく。水面に浮かぶ君の亡骸。その黒髪の漂いに、ひとつの可能性がからみつく。なかば生まれかけた存在が声を殺してしゃくりあげる。丘の上のものが、光の束をほどく。爛れた光は男の足元にこぼれる。かすんだ暗闇のあはい。ゆるい振幅の輪郭。私は、始まりの終焉。彼らより先にはもう戻れない。
薄闇がゆっくりとあがる。大気はじっとしている。風は止んでいる。森の中の茂みが揺れる。ゆっくりと茂みは揺れる。