2015-08-23から1日間の記事一覧

霧と森と残骸(抄)#3イリュノー

男の子はさ迷いました。深い森の中で、ひかりは届きませんでした。あらゆるものに声をかけましたが、誰も応えてくれませんでした。どこからか、水の音が聞こえてきます。とても悲しい音でした。谷の間から細く流れる水に根をおろし、水の精の樹がありました…

霧と森と残骸(抄)#2 イリュノー

霞んだ空気と、薄暗い光の中で、男の子は目覚めました。あたりでは、何ひとつ身動きをせず、音はその力を、失っていました。男の子は、森の中に入りました。森の中では、ひんやりとした静けさが、森の時間を、ゆっくりと動かしています。幾重にも織り成す枝…